新宿末廣亭正月二之席お籠り

本当は友人宅での新年会パーティのはずだったがオジャンになったんで、それじゃと気合を入れて新宿末廣亭へ昼夜通しで籠りに出かけた。
12時過ぎから9時までだから兵糧が必要だと伊勢丹地下を物色している内に12時を大きく回り、何人か聴きそびれたがまあいいじゃないか。
正月二之席でもあり少し張り込んで浅草今半のすき焼き弁当を抱えて木戸を潜ると1階席は桟敷の端を残して満席、「空いてる?」「ええ」と確認してから2階席最前列へ陣取る。


二楽 紙切り途中 小南とコナン 宝船
圓太郎 漫談
才賀 漫談
扇遊 一目上り
東京ガールズ 勧進帳
歌る多 宗論
円丈 金さん銀さん
伯楽 漫談
ひびきわたる 漫談
志ん橋 熊の皮
馬風 漫談


中入り


歌る多・美るく 寿 松づくし
歌奴 都々逸親子
小はん 小噺
川柳 歌は世に連れ
文楽 漫談
アサダ2世 マジック
市馬 二番煎じ



夜の部

かな文 やかん
小はぜ 狸の鯉
ホンキートンク 漫才
はん治 妻の旅行
左橋 四段目
しん平 獅子頭被る
松旭斎美登・美智 奇術
左龍 宮戸川
琴調 講談 徂徠豆腐
すず風にゃん子・金魚 漫才
権太楼 つる
小満ん あちたりこちたり


中入り


太神楽社中 寿獅子
小袁治 生兵法
南喬 大安売り
一朝 芝居の喧嘩
正楽 紙切り 羽根突き・鶴亀・星野仙一・犬
小三治 転宅


36席聴けて3,500円、97.2円/席たあ、なんとも素晴らしきコストパフォーマンスだ。
ここからは敬称略でトトトンと感想を語らせてもらうとするか。
前半は代演且つ漫談多目ながら漫談もかかる人がうまけりゃ、そら楽しい。馬風や圓太郎の漫談なんてたまらんよ。特に馬風は時事ネタが鉄板だね。今日は相撲ネタだったけどピカ一だった。
東京ガールズも楽しいし、末廣亭では初めてのひびきわたるの漫談も客席の笑いと共に楽しむ。
歌る多・美るくの松づくしは御目出度く正月らしいし、小はん・川柳と味わいの塊みたいなアラエイ(80歳まわりの方々)は寄席の御馳走。「歌は世に連れ」なんて何度でも聴きたいよ。
アサダ2世先生のゆるいマジックのあとでお待ちかね会長市馬の登場です。この寒波到来の季節にもってこいの「二番煎じ」に聴き入り、入れ替えの間に1階席へと移動したのでした。


前座のかな文も勢いよく、ご存知三枝作しかやらないはん治は三枝を超えた「妻の旅行」、おそらく三枝、じゃなくて当代文枝はこのネタもうやらないでしょう。左橋は高い調子の声で先代文楽の様に聴こえて、あれれこの人もっと聴かなきゃと脳内、そう左脳にインプットした。講談・にぎやかな漫才と続いての権太楼の「つる」。これには唸った。爆笑が出来る素晴らしい「つる」だ。「つる」なんて面白くないと思っている東西の噺家諸君是非聴かれろことを強く強くお薦めします。
続いて小満んが何をやるかなと思えば大好物の「あちたりこちたり」でついついニンマリ。ほっぺたが落ちそうだった。この噺、非常に自由な感じながらカチッと組み立てが出来ているのが凄い。何度でも聴きたくなるね。「替り目」の夫婦の印象もあるなあ・・・。で、本日2度目のお中入り。
鏡味仙三郎社中と翁家和助、であってるかな落協の太神楽社中の獅子舞、目出度いねえ。桟敷席の子供達もじっと食いついていましたよ。達者な師匠方がとんとんと一生懸命に噺をされて、さあヒザで紙切り正楽ときた。羽根つきで驚かして「御注文は?」
いろいろなお目出度い注文が飛ぶがその中に「星野仙一」の声。おお、そう来たか。それをどう切るかと見ていれば「龍に乗って昇天していくような姿」を切り出したんですよ、お見事!! あと桟敷の子供からのリクエストで「犬」、「知らないもの言われたらどうしようと心配だった」と笑わせながら桟敷に座る姉妹と犬を切り出して拍手喝采となりました。他のリクエストの声もあったけど、子供に的を絞ったのもサスガでございました。
と、やたら急に「です・ます」調に変調してきたのは、わたくしもやはりトリを意識してのことでしょうか?
そう、いまやただ一人の人間国宝、柳谷小三治その人。

座られても顔はやや左前にさがり気味で眼は正面を向く感じで決して健康とは思えず心配になったが実は最近退院されたばかりらしい。そんな心配から入ったものの、それは当初だけの事であとは自由自在な噺っぷりに酔わされた。何を語っても面白いのだ。いわゆる「ふら」のかたまりのようなもの。しかもネタに入れば「転宅」で本当に至福の時間を過ごせた。
今年は小三治トリの寄席にもっと行きたいものである。