伊那街道小野宿再訪


疲れがでて、午前中はだらりだらりと過ごしてしまいましたが、午後より南方に出撃しました。今日は塩尻から伊那へ抜ける途中にある小野に行ってみました。


小野宿の北端には造り酒屋がありました。「夜明け前」の醸造元小野酒造です。軒下にはまだ青い杉玉がぶらさがっていました。

この小野には立派な本棟造りが切妻側を道路に向けて2棟並び、その向かいに1棟が向き合う形で3棟が密集しており、なかなかに見ごたえのある宿場です。ただ、車の往来が激しいのが難ですがね・・・

小野宿の問屋であり名主をつとめた小野家住宅です。安政881859)年の大火以後に建築されたものです。この小野宿の本棟造りは切妻の屋根上部に「鳥おどし」という松本平独特の飾りをつけながら、破風部分に懸魚という伊那地方の飾りをもつけているのが特色です。



街道沿いに「曹洞宗 祭林禅寺」の石碑がありました。




小野昭和会が寄進したこの碑の側面には言葉が刻まれています。(この小野宿の北方には大きな「小野神社」があり小野姓の人々にとってはこの「小野」という地は特別の意味があるのかもしれません。)





生きることはつらい 無常を思うとかなしい 
しかし人間は生きぬいてきた 人それぞれに足跡を残して
何かがあるのだ生きるということに 偉大なる生命の秘密よ
私は生きる 風が烈しい日があったとしても



以前にこの小野宿を訪問した際に、この文に出会い驚かされました。なんと力強い文章なのだろうと・・・
この文をもう一度みたいという思いもあり今回再訪したのでした。
文自体はつたないものの、この文を書いた意志と、それをこの碑に刻んだ思いにやはり心動かされます。

こんな重い内容の文章が車がびゅんびゅん通る道端に書かれていることが面白いですよね。



石碑のところから川上を望むとこんもりとした木々に囲まれた祭林寺が望まれました。


祭林寺の本堂は独特の形式で、他では余り見たことのないものでした。(小野地区及び隣接した塩尻・辰野にはこのような本堂を持つ寺院があるのかもしれません。)
ちょうど、鐘をついておられることで、夕暮れ間近の境内に梵鐘の音がひびいていました。


山門を出ると、小野の町が見下ろせました。しかし、あとで考えるとここに写っているのは、「夜明け前」の醸造工場なのでした。



祭林寺の門前に2体並んでいた庚申像です。庚申像は別名青色金剛像と呼ばれ松本平に多い石仏です。像の下部に3猿(見ザル・言ワザル・聞カザル)と2羽の鶏が描かれているのも特色のひとつです。この2体でも右の方に3猿がよく残っていますね。頭上には太陽と月を頂いて、腕は6本、それぞれに弓等を持っています。
宗教学的にも民俗学的にも面白く、一度調べてみたいと思っています。