松本清張「神々の乱心」

松本清張の遺作である長編「神々の乱心」(上下巻 新潮文庫)を読了しました。
 

神々の乱心〈上〉 (文春文庫)

神々の乱心〈上〉 (文春文庫)

以前に原武史教授のこの小説に関する新書を紹介しましたが、成る程興味深い内容ですな。
ただ後半になってくるといささか乱暴な筋運びで、この真相を掴んだ男はどうなっていくのかと、ワクワクするも突然に張作霖爆殺事件に巻き込まれて死んでしまうし、わたらせ川遊水地や黒岩横穴墓で発生した複数の殺人事件の真相も、それに迫りつつあった古屋特高刑事や華族の次男である萩園泰之が暴く前に犯人側でベラベラと寝物語で明らかにされてしまう呆気なさ!! に気を失いそうになりますが、それでも面白いですね。

冒頭で埼玉県警古屋特高係長が梅広町を視察中に、大きな構えの屋敷を発見、同行の地元の署長に問えば「よく当たる占いをする」ところで「月辰会研究会」だと言う。もしや検挙された大本(おおもと)教が名前を変えて再起を図っているのではないか!? 古屋は研究会より出てきたタクシーを駅まで追いかけて、職質をかける。身分を一切明かそうとしない女性の持ち物検査を強引におこなう(このあたりがいかにも特高!!)と…なんと皇后に仕える女官宛の手紙「霊告」が出てきたのであった!! 泣き崩れるその女性は女官に仕える者だったのだ。女官宛の封筒には三日月の上に北斗七星を描いた碇星紋が赤く描かれていたのた。
職務質問を受けた女性は奈良吉野の実家に帰って間もなく投身自殺してしまう。自戒の念と真相追究の為に古屋は女性の実家である倉内坐春日神社の葬儀に列席する。そこには彼女を「月辰会」に派遣していた女官の代理で弟の萩園泰之も参列していた。古屋と萩園泰之、この両名が別々の視点から「月辰会」を、それに続く事件を追いかけていく事となる。時にクロスオーバーしながら…。



一読をお勧めします♪