川上未映子著「乳と卵」

今日は仕事、それも松本出張でした。
おかげで今日が最終回の「ちりとてちん」をリアルタイムで視聴することが出来ませんでした。それも3日続けてやからキツかったですよ。

終わってしまいました・・・「ちりとてちん
最終週は駆け足で残っている問題を片付けていき、「おいおい」と思ってしまったものの、「ひぐらし亭」も完成し、若狭もオメデタ&無事出産でよかったとしますかね。
やはり、続編かスペシャルを期待したいですね。

さてさて、今週も移動が多く、2冊の本を読了しました。

まずは、この間、芥川賞を受賞した川上未映子さんの「乳と卵」・・・


乳と卵

乳と卵

この小説を芥川賞に選考した作家の先生方はエラいね。まだ頭の中が新鮮な方々ですな。賞味期限を過ぎていない玉子のようなキレいな脳みそやろね。御見それしました。
面白い小説でした。文学表現でしか表せないような内容ですね。映像化したら軽ーいもんになってしまうでしょう。
ストーリーは・・・まあ簡単なもんで、東京に一人暮らしする主人公のところに大阪から姉巻子とその子緑子が訪ねてくる。巻子は豊胸手術の話題しか話さず、緑子は一切口聞かず、会話は筆記でおこなうしかない・・・確か10歳の緑子は性に目覚めた頃で、大人になることに否定的なのです。
この文体がええんで、今様浄瑠璃のような、その途切れない文章に魅せられました。

『饅頭と一緒に出されたスープの陶製の碗は少し欠けており、あ、あぶないかも、と私は思ったのやったけど、それを知らずにそこから飲んだ緑子の唇がぷつっと小さくひっかかって点として破れるところを想像してしまう、今日まだ一言も口をきかない緑子の唇の中には、真っ赤な血がぎゅっとつまっていてうねっていて集められ、薄い粘膜一枚でそこにたっぷりと留められてある、針の本当の先端で刺したぐらいの微笑な穴から、スープの中に血が一滴、二滴と落ちて、しかし緑子はそれに気付かず・・・』とえんえんに続いていくのでした。どこで切ろうか、悩んでしまうわ、このままいったらえんえんと句読点だけの文章が、失語症やなくて、読点喪失症のように入れっぱなしのお風呂のお湯があふれ続けて水道のメーターの数字が一定の速度で増えていく。

もう1編「あなたたちの恋愛は瀕死」という小説も収められていて全138ページ・・・
まあ是非とも読んで欲しい1冊ですね。

 岡本和明著「志ん朝と上方」

志ん朝と上方

志ん朝と上方

これはもう、読みやすい本で、あずさが甲府へ到着する頃には読了できました。
古今亭志ん朝がいかに大阪を上方落語を愛していたかを上方の師匠達へのインタビューから解き明かしていく、という本です。


この本の腰巻にはこうあります。

『上方を愛した志ん朝の素顔 上方をこよなく愛した名人を名人が語る。 
上方に、もっとも訪れた江戸前噺家は三代目古今亭志ん朝であり、上方でもっとも愛されたのも志ん朝だった。その上方で見せた志ん朝の素顔、芸のすごみを上方の名人達が語る。』


二人会をし、お互いに芸を競いあった、三代目桂春団治笑福亭仁鶴、浅草での住吉踊りに参加した露の五郎兵衛、お囃子として上方での志ん朝に間近で接した内海栄華・・・
上方の若い噺家や客からも慕われていたという志ん朝は、大阪では東京でよりネットリと口演していたといいます。
写真が少ない本だったのですが、両開き全面でのホントにいい写真が1枚収められていました。
お座敷でアロハのような半袖シャツにズボンをはいた志ん朝師匠が鉢巻して踊っている。その後ろでは嬉しそうに三味線を弾いている当代染丸と小太鼓を打つ当代小染・・・ええなあ・・・。

著者の岡本氏は「あとがき」で「以前から志ん朝の噺の中には上方落語の雰囲気を感じていたが、今回の取材でわかったような気がする」と書かれ、「志ん朝落語とは東京落語、上方落語、そして役者としての経験のバランスの上に成り立っているのである。」と結論付けておられます。


私も大の志ん朝ファンです。
この本の後ろにあった志ん朝の大阪での口演記録で、私が師を間近で見たのがいつだったのかが判明しました。

米朝志ん朝二人会 第3回」 平成6年10月27日 於池田アゼリアホール


桂 九雀   「七度狐」

古今亭志ん朝 「厩火事

桂 米朝   「らくだ」

中入り

桂 米朝   「茶漬け間男」

古今亭志ん朝 「付け馬」


この時の「付け馬」が絶品で、今でも志ん朝では「付け馬」が一番好きですね。
厩火事」も聴いたことは覚えていますが、米朝の「らくだ」を聴いたのは全く覚えていませんなあ・・・
あと、志ん朝師匠は一回だけ偶然に池袋で聴く幸運に恵まれましたが、その話はまた今度・・・


付き馬/三年目

付き馬/三年目







大阪ワッハ上方で展示されていた志ん朝師匠の色紙です。簡単に書いた絵がこれまた粋ですなあ・・・