岡本和明著「志ん朝と上方」

志ん朝と上方

志ん朝と上方

これはもう、読みやすい本で、あずさが甲府へ到着する頃には読了できました。
古今亭志ん朝がいかに大阪を上方落語を愛していたかを上方の師匠達へのインタビューから解き明かしていく、という本です。


この本の腰巻にはこうあります。

『上方を愛した志ん朝の素顔 上方をこよなく愛した名人を名人が語る。 
上方に、もっとも訪れた江戸前噺家は三代目古今亭志ん朝であり、上方でもっとも愛されたのも志ん朝だった。その上方で見せた志ん朝の素顔、芸のすごみを上方の名人達が語る。』


二人会をし、お互いに芸を競いあった、三代目桂春団治笑福亭仁鶴、浅草での住吉踊りに参加した露の五郎兵衛、お囃子として上方での志ん朝に間近で接した内海栄華・・・
上方の若い噺家や客からも慕われていたという志ん朝は、大阪では東京でよりネットリと口演していたといいます。
写真が少ない本だったのですが、両開き全面でのホントにいい写真が1枚収められていました。
お座敷でアロハのような半袖シャツにズボンをはいた志ん朝師匠が鉢巻して踊っている。その後ろでは嬉しそうに三味線を弾いている当代染丸と小太鼓を打つ当代小染・・・ええなあ・・・。

著者の岡本氏は「あとがき」で「以前から志ん朝の噺の中には上方落語の雰囲気を感じていたが、今回の取材でわかったような気がする」と書かれ、「志ん朝落語とは東京落語、上方落語、そして役者としての経験のバランスの上に成り立っているのである。」と結論付けておられます。


私も大の志ん朝ファンです。
この本の後ろにあった志ん朝の大阪での口演記録で、私が師を間近で見たのがいつだったのかが判明しました。

米朝志ん朝二人会 第3回」 平成6年10月27日 於池田アゼリアホール


桂 九雀   「七度狐」

古今亭志ん朝 「厩火事

桂 米朝   「らくだ」

中入り

桂 米朝   「茶漬け間男」

古今亭志ん朝 「付け馬」


この時の「付け馬」が絶品で、今でも志ん朝では「付け馬」が一番好きですね。
厩火事」も聴いたことは覚えていますが、米朝の「らくだ」を聴いたのは全く覚えていませんなあ・・・
あと、志ん朝師匠は一回だけ偶然に池袋で聴く幸運に恵まれましたが、その話はまた今度・・・


付き馬/三年目

付き馬/三年目







大阪ワッハ上方で展示されていた志ん朝師匠の色紙です。簡単に書いた絵がこれまた粋ですなあ・・・