柳家三三桂吉弥ふたり会




桂 しん吉   時 う ど ん


桂 吉弥    七  段  目


柳家三三    猫  怪  談  


中入り


柳家三三    引 越 し の 夢


桂 吉弥    胴 乱 の 幸 助 


いやあ、いい落語会でしたね。
しん吉さんも貫禄の「時うどん」で、十二分に会場の空気を見事に作り上げました。くすぐりを少なくした感じでしたが、開口一番のためでしょうか。それとも普段から関西ダシ風でやってはるんかなあ…。

吉弥さんはまた少し太りはりましたか? 一席目はご存知「七段目」。
吉弥さんで聴くのは久し振りですな。陽気でいい「七段目」でした。
マクラは一番弟子の「弥太郎さん」の話から、歌舞伎の大向こうからの掛け声の話にうつり、「昔は文楽師匠の『黒門町!!』のように落語家も住んでいる住所で声が掛けられた。しかし掛け難いところもありますな。たとえば『尼崎センタープール前!!』」
これは師匠吉朝師のマクラと一緒!! それをわかっている人も多かったのか、この「センタープール前」で拍手が起こりました。


三三さんの一席目はネタおろしの「猫怪談」。 なんとも妙な味のある噺でありましたな。三三さんの与太郎はいいですね。この噺は与太郎の親父さんが亡くなっているところから始まり、始終その遺体と共にウロウロするという、薄気味悪いストーリーで、おまけに遺体がピョンピョン跳ね出すというクライマックスもあるので、噺家が替わり演出が変わればとても恐ろしい噺になるでしょうねえ…。ただ、動き出した親父さんに喜ぶ与太郎目線で三三さんが演じているので滑稽さが勝ちまして、後味まろやかでございました。
棺桶担いで深川から駒形橋、上野広小路不忍池、谷中と急ぐ道順で今度歩いてみましょうかねえ…(「黄金餅」よりは楽そう)
マクラではインフルエンザ騒動の最中での神戸講演の話にからめて「豚インフルエンザ」が知らない間に「新型インフルエンザ」になっていますね、と語られていました。そこから、「そういえば、昔は北朝鮮のニュースでも必ず正式国名を言っていたのに・・・」と振っていかれましたが、もうひとつお客はついて来ずに戸惑っておられました。しかし、その変更はアナウンサーの訴えによるものではないかと推論からのオチには爆笑が起こってましたね。


中入りを挟んでの三三さんの二席目は「引越しの夢」
う〜ん、上方の「口入屋」ですか。女中就職の前段部分は番頭の「ドガチャガドガチャガ」発言だけで、新女中の身の上話や身につけたお稽古事の列挙という山場はなし。夜になると、番頭達は女中のもとへ忍んでいく… 2階へのハシゴ段は戸が閉まっていて台所へ行くという、上方と同じ展開となります。
そこで気になったのは江戸も大坂と同じで台所にイケイケになっている中二階があったんですかね。そして担いでしまうのが「膳棚」ではなく「吊棚」。まあ、醤油は入っていたようですが・・・
やはり、題名と共に違和感が残ってしまいましたね。
しかしね、三三さんはキッチシ演じておられて気持ちがいいですね。

トリの吉弥さんは「胴乱の幸助」
雀三郎師を聴いてビックリ爆笑した噺でしたが、残念ながら雀三郎版ではございませんでした。誰にならわれたのかな?ひょっとしたら「親子茶屋」に続いて米團治師でしょうか?
前段は喧嘩の仲裁が趣味な割り木屋のおっさん「胴乱の幸助」に一杯飲ましてもらおうと相体喧嘩する喜六清八の爆笑譚で、後半はお芝居の桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)に関するお噺。主人公のお半長右衛門から通称「お半長」と呼ばれる芝居も元は人形浄瑠璃で、稽古屋でその練習をしているのを見た「胴乱の幸助」が今(といっても明治初期)の話と勘違いして喧嘩を仲裁しに三十石で京へ上るといったお噺。
吉弥さんは貫禄十分、笑いもたくさんで文句なしの「胴乱の幸助」でおました。


今回、初台から代々木経由で紀伊国屋サザンシアターまで歩こうと思ったのは、前回三三さんが「ここは代々木の方が近いよ」と言われてたからなんです。
ホントに代々木からスグでしたね。