井原西鶴「好色五人女」

新版 好色五人女 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 好色五人女 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

今年2冊目に読了したのはコレでした。毎年正月には古典を読もうという気がムクムクと起き上がり、
去年は上田秋成の「雨月物語」を読みましたね。
雨月物語」も「好色五人女」も江戸の作ですから、なんとか脚注だけで読めますが、やはり現代語訳が
ついていた方がより進みやすいですね。

好色五人女」は貞享3(1686)年に大阪で出版された浮世草子です。なんといっても「好色」ネタですから
面白く読み進むことが出来ました。
また「絵」もいいんですよね。落語に出てくる馬の乗り方・・・三宝荒神乗りという3人乗り・・・なんかもわかりますしね。

巻1から巻5まであり、それぞれが実際におこった当時としてはポピュラーな事件を取り扱っています。



巻1・・・姫路のお夏清十郎事件 主人の娘と奉公人のならぬ恋

巻2・・・大坂天満の樽屋の女房おせんが麹屋の主人と恋に落ちそうになり発覚する

巻3・・・溝口健二の映画「近松物語」の原作に近いもので、京の大経師の女房おさんが奉公人と駆け落ち

巻4・・・ご存知、八百屋お七の物語

巻5・・・薩摩の男色坊主が大家の娘とくっつく話


と乱暴なまとめかたで我ながら呆れますが、まあこんな感じで、「男色」なんてものが巻4(お七が濃いする吉三郎が若衆)・巻5と
普通に取上げられているところが今の世から見るとビックリです。

一番面白いと思えたのは巻2「情けを入れし樽屋物語」ですかね。
西鶴の地元でおこった、この「好色五人女」執筆の動機ともなったと思われる直近の事件ですからね。
奉公人のおせんは御節介婆さんの手で樽屋を紹介され、伊勢への抜け参りの途中に樽屋と結ばれるんです。私なんかが「伊勢参り」と聞きますと、

大坂離れて早や玉造傘を買うなら深江が名所・・・と奈良を通っていくルートを考えてしまいますが、この本では京回りで行ってますね。
冒頭の「三宝荒神乗り」が出てくるのがここです。逢坂山から大津へ向かう時のことでした。
この話は落語にも十分出来そうに思われますよ。

あと、この巻2に「天満に七つの化け物あり」とこんな一節が出てくるのも興味深いものです。


『天満に七つの化け物あり。大鏡寺の前の傘火(からかさび)、神明の手なし児、曽根崎の逆女(さかさまおんな)、十一丁目の首しめ縄、川崎の泣坊主(なきぼうず)、池田町の笑ひ猫、鶯塚の燃え唐臼(からうす)、これ皆、年を重ねし狐・狸の業ぞかし。世に恐ろしきは人間、化けて命を取れリ』


もうこの七つは不明らしいですが、なんとか解明して名物にでもしれもらいたいもんですなあ・・・




WEBで見つけた「巻5」の宝物に唖然とする姿 下に置いてあるのは「人魚の塩漬!!」