半藤一利著「昭和史」


日本で8月になると、否が応でも「戦争」を考えさせられますねえ。もはや戦後65年ではありますが、今年は特にテレビでも良質の番組がたくさん作られているんじゃないでしょうか。
この間、BShiで放映された「日本のいちばん長い夏」もよかったです。
その原作者でもある半藤さんが以前に書かれていた「昭和史」が文庫になったのを機会に読んでみました。


昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)


非常に読みやすく、重要な点を押さえつつ太平洋戦争に至る軌跡、そして敗戦までを語られています。
あとがきにもありますが、編集者の依頼で2003年4月から12月までに行われた講義を書きおこしたものなんですね。



昭和史に関する著作は多く読んでいますので、既知の内容は多かったものの、何点かは「そうだったのか」と思う箇所がありました。
ひとつは盧溝橋事件は日本の陰謀による「運命の一発」が原因と言われていますが、そんな簡単なものではなく、今でも真相がわからないという点ですね。
もうひとつはアメリカが当初要求してきた事は満州国に一枚加わらせてくれ、という条件提示があった事。そうなんですよね。モンゴル人民共和国だってソビエトの傀儡ですし、インドシナはフランス領、フィリピンはアメリカの統治下と現在の頭では考えられない帝国主義的世界だったんですからそういう条件を出してくるというのも「大あり」なんですねえ!! 
更にもうひとつは開戦時に駐米日本大使となった野村吉三郎海軍大将は外務大臣時代に親独派官僚を中央から追い出す等した為に当時の外務省の主流派には甚だしく評判が悪く、それが開戦通知の遅れという世紀の失策に繋がっているんではないかという指摘でした。
当然、他にもありますがこれぐらいで・・・



なにしろ大部の本で「あとがき」「参考文献」までいれて546ページもあります。
みなさんも読む時には興味を持った部分から読み出されてはいかがでしょうか。ちなみに私は第8章「第二次世界大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした」から読みました。米内・山本・井上の海軍トリオが日独伊三国軍事同盟に反対する部分ですね。




太平洋戦争 (上) (中公新書 (84))

太平洋戦争 (上) (中公新書 (84))

開戦後ですが、この本も戦争通史としてはまとまっていて読みやすい本としてお勧めです。