山本重樹著「究極のドラマ 実録ヤクザ映画で学ぶ抗争史」


先週、西荻窪でバスを待つ間に入った本屋で見つけて買い求めた本です。
どういう吸引力で購入に至ったのか甚だ疑問ではありますが一気に読了した次第です。

究極のドラマ 実録ヤクザ映画で学ぶ抗争史 (ちくま文庫)

究極のドラマ 実録ヤクザ映画で学ぶ抗争史 (ちくま文庫)


なんとも「とんでもない事」でありながら、実際にこの同じ地ベタで行われていたというヤクザの抗争の歴史・・・勉強させていただきました。
(「学ぶ」とタイトルにありますからね)

ご存知「仁義なき戦い」や「北陸代理戦争」「山口組三代目」「総長の首」「激動の1750日」などなどの映画の、そのモデルや実際の抗争について詳細に記述されています。
もともと任侠映画が「安保闘争」や「全共闘」の、いわゆる政治の時代の若者達に熱狂的に迎えられた後に、そのドキュメンタリー版として登場したヤクザ映画ですが昭和の終焉と共に消えていきました。
先程、列記した映画はDVDやビデオで私も観たものですが、その背景、実際は凄まじいものであったことがよくわかりました。特に「北陸代理戦争」は映画が引き金になってモデルのヤクザが殺されたという衝撃!! それも実際に撮影した喫茶店で襲われたというから凄いですね。


冒頭にも書いた通り、この内容は事実という事に何よりも驚かされるのです。それは裏社会という言い方で、我々の社会と隔絶させてしまいがちですが、決して「裏」などではなく横並びの同じ地ベタでの出来事というのが重要な視点だと思います。
もはや収拾不可能な現在の政治も、この間観てきた映画の原発問題も、全て同じ世の中の横一線の出来事ですよね。そういう見方をすると、皮肉な事に真直ぐに迷う事なく暴力に訴えるこうした社会の方が「わかりやすい」だけに、真っ当にさえ錯覚してしまうのでした。それは大変に恐ろしい事なのですが・・・暗澹としたこの淀んだ空気を一気に吹き飛ばして欲しいという空気が蔓延しつつあるような気もしています。これは本当に怖いな。


なんて真面目な事書きながらも、この本面白いんですわあ…グイグイ読ませよるんですよ。



本書の中で何度か出てきた東映とヤクザ社会との関係について語られた言葉が秀逸だったので最後に紹介します。
「当時、警察当局が疑った、東映山口組の資金源になっているというのは真逆で、その実、東映株式会社が徹底して山口組を商売にしてきたというのが実態」
恐るべし映画業界!!


また、この本を文庫オリジナルで採用した「ちくま文庫」も、これまた「恐るべし!!」ですよね。