瑞浪市小里 ―わが原風景

JR中央本線瑞浪みずなみ)駅南方にある小里(おり)地区は、おだやかな小里川が流れ里山に囲まれている。
土岐より興った製陶業が盛んでレンガ造りの煙突がいくつも並んでいる。
この地こそ、我が祖先の地であり、私にとって「原風景」のひとつなのだ。
5代前の惣蔵はこの地で農業をして暮らしていた。

この地に父方の伯父がおり、子供の頃には夏休みの度に従兄弟達と泊りがけで遊びに行ったものだ。
家の前に田が広がっており、当時熱中していた昆虫の宝庫だった。
川中をじゃぶじゃぶと歩いて遡ると、ミズカマキリ等の水棲昆虫がうようよとおり、頭上の木々ではミンミンゼミが今を盛りと鳴いていた。その一匹がぽたりと眼前の水面に落ちてきた光景は今も鮮やかに憶えている。夜になると、白布をひろげて白熱燈を照らして昆虫をおびき寄せた。
ゲンゴロウの仲間のガムシやミヤマカマキリ等が飛来してきた。

この地を最後に訪問したのはいつだったか・・・30年以上前であるのは確かだ。

昨日、「ニホンオオカミ」展を見、山根一真氏の講演を聴いて興奮醒めやらぬままに高速を走っている時、この小里の伯父の死が知らされた。
久々に「生物」系に感動した日の夕暮れに、私にとって昆虫と親しんだかの地の伯父の訃報が飛び込んでくるとは!!

今日は午後早退し、中央道を南に瑞浪へと急いだ。
ただ、「小里も変わったに」という話をきいていた私は「原風景」が失われ、様変わりしてしまっていることを恐れていた。

夕暮れに到着し、小里川沿いに駐車して伯父宅へと歩いていくと・・・眼前になつかしい田園風景が広がっていた。
「原風景」は変わっていなかったのである。
農薬等の影響で昆虫は激減し、もはや水棲昆虫などはほとんどいないであろうが、「風景」だけは残ってくれていたのだった。





小里川沿いには花が咲いていた。