いやあ、おそれいった映画でした。長江に巨大ダムがつくられ、多くの町が水没するという話は聞いていましたが、この映画はまさにその水没しつつある町が舞台なのです。
その長江をいくフェリー内から映画は始まります。人の息でむせかえる船内を静かに移動していくカメラが船内を出るとひとりの男が暑さに上着を脱ぐ・・・それがこの映画の主人公のひとりハン・サンミンです。
彼は山西省より16年前に家を出た妻と娘を探しにやってきました。バイクタクシーでメモの住所まで連れていってもらうと・・・そこは川の中でした。彼は妻と娘を捜すため、この町で働き出します。やがて水没するこの町のビルの解体を生業(なりわい)として・・・ もうひとりの主人公は女性です。彼女サンミンは2年間音信不通の夫を探しにやってきました。
そこで、この男女はそれぞれにたくさんの人達に出会い、変貌していく町の中でくらしていくのです。
人々の自然な演技に、その背景となるリアリティあふれる貧しさが、今観ているものがフィクションなのかノンフィクションなのかわからなくなっていきます。
ジャー・ジャンクー監督恐るべし・・・

☆☆☆☆

しかし、200人程度の定員の映画館がほぼ満席になっていることにも驚かされました。(娯楽映画じゃないのにね)
色々考えながら新橋まで歩き、駅前の岡山ラーメン「後楽」でめん定食を食べて帰路についたのは22時を大きくまわっていたのでした。