岡野友彦著「源氏と日本国王」

さて、本日の読了図書の紹介♪
少々堅めの内容ですが非常に興味深い一冊でした。


源氏と日本国王 (講談社現代新書)

源氏と日本国王 (講談社現代新書)



そもそも氏名の「氏」とはなにか、それと苗字はどう違うのか、さらには天皇家にはナゼ「氏」も「苗字」もないのか?というところから紐解いて行きます。学校での習った通り、「氏」というのは源平藤橘といわれるように、「源氏」「平家」「藤原」「橘」それに「蘇我」や「物部」「大伴」等、古代の天皇より与えられた名前なんですね。
その「氏」が分家し、その家々に家業や地名等によって出来たのが「苗字」なんです。藤原氏近衛家鷹司家四条家に分かれたように、便宜上でも苗字を使うことが多くなったものの、中世から近世にかけては「氏」の力は大きかったようです。
中でも源氏は天皇家に非常に近い出自なんです。「平家」が天皇の孫が一人いるだけで、他はそれより親等が低い者が臣籍降下し「平」姓を与えられたのに対し、「源氏」は皇子や親王がなってるんです。言い換えれば、天皇の家族を王家とすれば、「源氏」はその王家に一番近い王族ということが出来るんです。そもそも、源氏の始まりは、嵯峨天皇の皇子皇女のうち、一気に32名が「源」の氏を与えられ臣籍降下ことなんですね。
なんと嵯峨天皇には后妃夫人は少なくとも30人以上、皇子皇女は50人にのぼるという11代将軍徳川家斉に匹敵する日本史上に輝く精力絶倫の権力者だったんですな!!
嵯峨天皇の皇子皇女と源氏になった男女はもちろん兄弟姉妹な訳で、そこからはじまった源氏がいかに王家と近いかが実感してもらえると思います。
嵯峨天皇の後、清和天皇陽成天皇等歴代計13天皇の子供達が源氏の氏を与えられて臣籍降下していきます。それ等源氏のうち、一番高い位についた人物が『源氏長者』となり、足利義満以降幾人かの例外を除いて徳川慶喜まで征夷大将軍がその地位についており、「日本国王」というキーワードと重ねていくのが著者の力技であり、面白いとこでもあるんですが・・・まあ、そのあたりは次回、というか読んでもらいましょうか・・・