「モーターサイクル・ダイアリーズ」


主人公は医学生のエルネスト。彼は30歳を間近にしているアルベルトとのコンビでオートバイによる南米縦断の旅に出ます。
南米と言うとスグにアマゾンなどを思い起こしますが、彼らが旅する南米の豊かな自然と人々には目を見張るものがあります。それこそジャングルから砂漠、雪降る高地まで様々な美しい風景を眺めるだけでも一見の「価値あり」ですね。いいロードムービーです。
オンボロのバイクは始終壊れ、彼らを悩まします。その都度、多くの人々に助けられ(時には人をだましながら)、旅を続けていくなかで、アルベルトは多くの人々、特に貧しき人々に出会っていくことになるのでした。
チリのアカタマ砂漠・・・(ここの風景は驚いたことにNASAが発表した火星の表面写真とウリふたつでしたが、)ここでは野宿する際に夫婦と出会います。その夫婦は先祖代々の地を「発展」という名目で地上げ屋に追い出され、共産主義者として警察に追われながら職探しをしているのでした。近くにある銅山へ向かう途中だと静かに語ります。夫婦は彼らに質問します。
「なぜ旅をしているのですか?」
夫婦にとって「旅」とは「職探し」という目的のためにしか存在してないのです。この若者達は何の目的で旅をしているのかが不思議だったのでした。
エルネストは答えます。
「旅のために旅をしている」と・・・

夫婦が向かうチュキカマタ銅山は当時、アメリカのアナコンダ社が牛耳る世界最大の銅山でした。

ペルーではマチュピチュの遺跡にも立ち寄りました。その素晴らしさに目を奪われますが、同時に街に住むインディオの貧しい姿も彼らは目撃するのです。
その後、彼らはアマゾンのサンパブロにあるハンセン病患者の治療施設を訪れ、長期滞在します。エルネストの専門はハンセン病なのです。既に、ハンセン病は伝染しないことがわかっていましたが、その地でも患者は島に隔離され、医者や管理するカトリックのシスター達は川向こうで生活しています。島に渡る際にはゴム手袋をして患者と接触していました。エルネストとアルベルトは反抗し、素手接触し患者達との人間関係を構築していきます。
ここを離れる前夜、エルネストはひとり川に入り、患者達のいる島を目指して泳ぎだすのでした。



映画は81歳になった現在のアルベルトの姿で印象深く終わります。
実はこの映画の原作はこのアルベルトの日記であり、私の借りたスペシャルBOXでは、この映画のメイキングDVDがおさめられおり、元気なアルベルトが楽しく当時の思い出を語りつつロケに参加する映像は実に素晴らしいものでした。そのメイキングDVDの名は「トラベリング・ウィズ・ゲバラ」・・・
そう、エルネストこそ、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラその人なのでした!!!
この旅で政治に目覚めたエルネストは革命へと身を投じていくのです。
先程、公開されたチェ・ゲバラ2部作に先行する作品な訳です。
エルネストを演じたガエル・ガルシア・ベルナルは素晴らしい俳優として記憶に残りました。(エルネストは喘息持ちで映画の中でもなんども激しい発作に襲われるのですが、その迫真の演技には驚かされます。)

南米の風景を眺めるつもりで、一度ご覧になってはいかがでしょうか?









■原作

トラベリング・ウィズ・ゲバラ

トラベリング・ウィズ・ゲバラ

■同時にゲバラ自身の旅行記も出版されている。

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)