川上未映子「ヘヴン」を読む

久々で「群像」を買いました。「純文学」という、おそらく世間一般では死語になっている分野の月刊誌はどのくらい発行しているのでしょう? というかホンマに売れているのかな?
もっとも群像8月号は品薄でして何軒かの本屋をまわり、「あのアナ場の本屋にはあるのでは・・・」と予想したN駅の高架下にある本屋さんでようやく無事ゲット出来た次第です。
先週の「情熱大陸」で、この「ヘヴン」を書きあぐねている、アグネちゃん状態の川上未映子さんのお姿を目にし、こりゃ読ましてもらいましょう
・・・と思ったんですね。

群像 2009年 08月号 [雑誌]

群像 2009年 08月号 [雑誌]

情熱大陸では去年の12月から彼女の初長編&初大阪弁封印小説の執筆にカメラを向け続けていました。
(といっても、髪振り乱して書きまくる姿とかではなく、その執筆の合間合間の姿でしたが・・・)何度も締め切りに間に合わず、
時にはカメラの前から遁走し、ずるずるずるずる8月号掲載にようやくたどり着いたのでした。
前作「乳と卵」は面白かった。さて、本作は如何!?
斜視が原因でいじめられている中学生の男の子が主人公です。同じクラスに汚いといじめられている女の子がいて、ふたりの交流がはじまる・・・ 
いじめられ続けても反撃しない自分達の姿の中に存在意義を見出そうとする二人の姿。冒頭近くに男の子に対してイジメ側ながら一歩距離をおいた少年が登場していましたが、終盤近くになって主人公の男の子と、その少年の間で認識論とも存在論ともとれる形而上的会話が繰り広げられるのでした。
物語としては更なる終盤に大きな山があり、静かな印象でクローズするのですが・・・
面白かったものの違和感が少し残りましたね。この小説でヤマ場が必要だったのかと・・・
現にイジメられている少年少女が多くいるこの世界の中で、安易な劇的展開での開放を図る必要があったのかと・・・むしろ勇気ある破綻を選択したほうがよかったんじゃないかなあ・・・
しかし読む価値ありだと思いますよ。




川上未映子ブログ『純粋非性批判』
http://www.mieko.jp/
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