堤未果著「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」(岩波新書)を読む

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)


アメリカはスゴいね。とことん民営化を突き進んでいる。もう少しで日本もこの方向について行ってたかと思うとゾッとします。
前作(読書日記は下のHP参)でも驚きましたが、もうア然とするしかないですよ。
『行き過ぎた市場原理』=民営化により、『戦争の継続を望む軍産複合体を筆頭に、学資ローンビジネス、労働組合や医産複合体、刑産複合体など、政府と手を結ぶことで利権を拡大させるさまざまな利益団体』はロビイストや多額の献金によってアメリカ政府を牛耳っており、オバマも全くお手上げ状態なのです。いやむしろ、その献金オバマの選挙活動にさえ大きく貢献していて桎梏となっているんですね。
教育や医療、刑務所運営など国や州が悩み解決を図っていかねばならない問題を民営化という形で丸投げし、受け取った企業側はその問題自身を市場として利益を生んでいくなんて癌に蝕まれている体そのものではないですか!!
学資ローンは民営化が進み、返済が怠るとブラックリストに掲載され逃れられない・・・法律によりたとえ破産しても免れないんですよ。驚いたことに支払いの追い込みも合法化されているのです。またローンは滞納すると、どんどん利率が上がっていくのです。学費自体も上昇を続けます。
一流大学へ進学している中流以下出身者の比率は10%しかいません。何しろ学費と寮費で年間700万円いるんですよ!! 年収1,000万程度では息子を一流大学に入れることは不可能なのです。(ハーバード大学では年収1,800万円以下の家庭には年収の10%の学資を減額してくれるそうです。)
前作でも取り上げられていた医療崩壊では、いわゆる開業医は壊滅・・・治療の義務があるERに患者が殺到して医療費未回収で倒産する病院も続出。オバマ国民皆保険制度も挫折という有様・・・。
今回のⅡで一番驚いたのは民間刑務所の話とスリーストライク法の話ですね。
州による刑務所経営は破綻し、いまや続々と出来ている民間刑務所!! そこでは中国から輸入するより安い経費でモノがつくられ、ますます製造業を蝕んでいるんだそうです。
スリーストライク法・・・軽犯罪であろと、三回逮捕されると終身刑が言い渡される法律です。えっ!!って感じでしょ。貧困が犯罪を生み、3回逮捕されれば終身刑・・・映画では極悪非道な人々であふれ帰っているアメリカの刑務所ですが、本当のところはほとんどの囚人が軽犯罪犯だそうです。

どこへ行くアメリカ!! どうする同盟国ニッポン!?




■散歩堂日記『堤未果「貧困大陸アメリカ」 民営化という悪夢」』
http://d.hatena.ne.jp/sampodow/20080321