篠田謙一著「日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造」

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)



人間の細胞にあるDNA・・・それは祖先達からの情報にあふれているのです。
その中でミトコンドリア内のDNAは卵子細胞より伝えられる為、その変異の特徴から今までどのような変遷を辿ってきたかを探ることが出来るのです。
本書はそのミトコンドリアDNAを中心に語っています。
また、母から娘へと代々女系に伝わるミトコンドリアDNA(当然、伝えられないものの息子も持っているのですよ。念のため!!)に対し、男性のみにあるY型染色体の変異をたどっていくという研究も始まっているのです。これは全ての人類が持っているミトコンドリアDNAに対して、男性しか持っておらず収集も1/2になることから、どうしてもミトコンドリアDNAからは遅れてしまっているんですなあ・・・。


DNAはその変異の仕方によってグループ分けされてきました。そのグループを「ハプログループ」と呼びます。ひとつの「ハプログループ」は更に違う変異をして区分けしていくんですね。地域別採取や遺跡出土の人骨調査によって、その一番の「根元」はアフリカであることがわかってきました。それはミトコンドリアDNAもY染色体DNAもほぼ同じ結論であり、アフリカから世界中に人々が旅立ったのも8万5000〜5万5000年前であることも判明しました。(つまり、それ以前に出土している各地の原人は我々の祖先ではないということになります)
それにしても、思った以上に「出アフリカ」は最近のことだったのです。
日本には大陸経由の「ハプログループ」と南方からの「ハプログループ」が混在していることがわかっています。
ただ、思った以上に「ハプログループ」のうえからは、朝鮮半島や中国南部との違いは少なくて著者自身は「国」「民族」でしか物事を考えないのはおかしいのではないか、と語るのでした。(日本国憲法前文が出てきたのには驚きました!!)

もっとも、DNAの連鎖だけではなく、気候風土も「国」や「民族」の形成には大きく関与していると思いますが・・・。

最後にふたつ面白い「ハプログループ系統図」を紹介します。「ハプログループ系統図」とは突然変異していくハプログループを系統だてたものです。ふたつの民族があれば、どちらが古いか、どこで枝別れしていったかが分かるのですね。
興味深いことには女系のミトコンドリアDNAと男系のY染色体では全く系統図が異なっているのです。



ミトコンドリアDNAのハプログループ系統図



Y染色体のハプログループ系統図


面白いですよね。今後国際結婚などが進み、この系統図はどんどん変化していくでしょうが、ここから読み取れることは、ミトコンドリアDNAからは「縄文から弥生への移行は侵略的なものではなく、平和的なものであった」ことが読み解けるそうです。またY染色体は日本とモンゴルが近いというより、「辺境の地であり、大陸の変化から取り残されていたもの」なんだそうですよ。
他にも色々とグラフがあり、これらを見ているだけでも面白いですね。