動楽亭 8月16日

弥っこ 道具屋
雀五郎 金の大黒
かい枝 野ざらし
塩鯛 鹿政談
中入り
梅団治 エスエル
文太 三十石夢通路

久し振りの動楽亭へ。お盆休みで満員では困ると会場前の到着を目指す。私は結構ゆっくり動き出す方なのでこんなのは珍しい。そのお蔭で希望の座椅子席上手中程に座る事が出来た。よしよし。

吉弥の弟子弥っこの元気な道具屋に続いて期待の雀五郎だ。正月の「気分は御参詣」で聴いた「鴻池の犬」が絶品だったので、今回の夏季休暇中で是非とも雀五郎を聴きたかった。
噺はドガチャガ系の初代春團治十八番ネタ「金の大黒」、初代春團治が加えた(と思われる)オカズがいっぱいで新たな工夫を余り必要としない噺だけに笑ったものの、期待した程弾けるまでには至らなかった。しかし、本当にマークすべき噺家で、重要参考人として東京に連行し、落語をしてもらいたいぐらいだ。
初の独演会が9月22日(土)に天満天神繁昌亭で開催される。秋の彼岸でもあり、うまく帰阪と合えば行きたいものだと思っている。
続いてかい枝は「野ざらし」、去年兄弟子の坊枝で聴いて「えらいニンに合うてるがな」と二重丸つけたのだが、今回のかい枝野ざらしも十分自分自身のフィールドに引き込んで我が物としていて聴いていて気持ち良い。ひょっとしたら「野ざらし」は東京落語の中でも飛び切り陽気な噺だけに上方の噺家には合うのかも知れないとも思えてきた。しかし、かい枝は良かった。やはり元々の上方落語「骨釣り」でも聴いてみたいな。
中入り前は貫禄が出てきた(貫禄が出てきたと言うても太ったとかそんな話ではなく噺家としての座りが重くなってきたという事ですよ、とそうなってきた)塩鯛が延々と語る各地の土産物話のマクラが御馳走であった。出町柳ふたばの豆餅は最近、古本仲間がそれを買ってから下鴨納涼古本市に参戦したとの話しを聞いて初めて知ったのだが、人気の行列が出来るお店らしい。それが七条の系列店で並ばなくても買えるという誠に美味しい話に、私も思わず「七条ふたば豆餅」とメモした程である。漫談で終わるかと思えば、淡々と鹿政談に持ち込み、「切らずにやるぞ」「豆に帰ります」と、きれいに中入りとなった。

モタレは久々の梅団治、いわゆる鉄ちゃん。何をやるかなあ〜と思えば落語ファンと鉄道ファンはイコールではなく、 独演会でやってもう2度とやるなと言われた鉄ネタだと、新作「エスエル」をかける。それ程の鉄知識がなくても楽しめたが、楽屋にオチがどこか伝わっておらず綺麗に締まらなかった。まあそれもご愛嬌だろう。
トリは文太、いつ以来だろうか?ゆったりとした喋りで、ゆったりと三十石に入っていく。京見物もたっぷりやって伏見の舟宿、やがて舟は岸を離れ行く。暑い夏の昼下がりいいものを聴けた。
舟がどこに着くのか?どこで噺が終わるのか?どこまでやろうかと手探りのうちに、ここまでと急に終わったが、それも旅噺らしくて良かったよ。大きな拍手を送り気持ちよく動楽亭を後にした。
さあ、壊れた実家のクーラーを買いに行かなくては・・・。
(敬称略)