昨年、放映されたTVドラマ「医龍」は面白い医療ドラマでしたね。国境なき医師団のようなところで治療活動を行っていた主人公の医師朝田龍太郎が大学病院でチーム・ドラゴンを組み、バチスタ手術に挑む。そこに大学の教授選挙などがからむといったドラマでした。
バチスタ手術というのは拡張型心筋症に対して、拡張した心臓の一部を切り取り、小さくするという、ブラジル人バチスタ医師が考案した手術法です。ドラマのエンドタイトルには「今ではバチスタ手術は確立され、安全な手術となっています」といったようなテロップが出ていましたね。
さて、ある日のこと本屋さんをのぞくと海堂尊著「チーム・バチスタの栄光」という本が平積みになっていました。



チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光


TVドラマ「医龍」の原作は漫画であることは知っていましたが、この本も関連するものかなと、手にとると腰帯に「第4回 このミステリーがすごい大賞」とあり、また読書家としても有名な児玉清さんが「これは待ち望んでいた一冊でした」とコメントされていました。よし買いだ!!とレジに持参した次第です。
藤沢周平を読み続けていた私にとっては、全く異分野のこの本は新発売のドリンクのように新鮮で且つ非常に面白いものでした。

医龍」と同じく舞台は大学病院「東城大学医学部付属病院」です。アメリカのサザンクロス病院から招聘された優秀な外科医桐生恭一を中心としたバチスタ・チームは、手術を次々に成功させていました。しかしながら、30例目に達した今、ケース27・29・30と28例目をのぞいて術死が連続しているのです。危機感をいだいた病院長高階権太はその調査を病院内の出世競争からドロップアウトした不定愁訴外来担当の講師田口に依頼してきたのでした・・・  
術死の連続は「単なる不運」だったのか、それとも「医療ミス」か、それとも「悪意によって引き起こされた事態」、つまり「殺人」だったのか。
田口は術死の深層に迫れるのか、チーム・バチスタはこの危機を乗り切ることが出来るのか・・・

いやあ、面白かった!! 2006年2月に第1刷が出て、購入した本は2006年12月の第8刷でしたから、相当に売れた本なんですね。(HPによると28万部を突破しているそうです!!)本屋にはよく足を向けるのに、なぜ今まで気が付かなかったのでしょうか。
バチスタ・チームだけで7名と登場人物が多いのですが、おいしいご飯でよく言う、「米粒が立っている」という感じでそれぞれに描き分けられていてグングンと読み進めさせる力を持っています。基本的にはいくつかの手術シーンを挟みながら、チーム・バチスタスタッフへの聞き取り調査で進んでいきます。どうしても単調になりがちな構成ながら中継ぎ投手のように突然にして現れるトリックスターもからみ、ストーリーは沸点に向かって突き進んでいくのでした。
おそるべし、「海堂 尊」!!  彼は奥付にある著者紹介によると現役の勤務医とのことです。

この海堂医師は相当の達筆とみえて、驚いたことに既に第2弾「ナイチンゲールの沈黙」、第3弾「ジェネラル・ルージュの凱旋」と刊行されておりました。これは当分楽しめそうです!!!