ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙



海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」に続くシリーズ第二段「ナイチンゲールの沈黙」を読了しました。
舞台は同じ桜宮市の東城大学医学部付属病院。登場人物も「チーム・バチスタの栄光」の不定愁訴外来担当田口講師と厚生労働省大臣官房を中心とした面々・・・ただ、前作が新幹線で喩えるならば「のぞみ」であれば、「こだま」まではいかぬものの、静岡には停車する「ひかり」といった感じで、読み進むスピードも面白さも比例してスローダウンしていましたね。
まず、事件が病院外で起こることが一因かな?それと前作ではバチスタ手術が次々と進行する中での謎解きだったことに緊迫感、スピード感があったと思うのですが、今回の「ナイチンゲールの沈黙」にはそういった仕掛けが足りませんでした。そうそう、途中で張った伏線を使い切らずにラストへと走り込んだようにも思えました。

今回の舞台は小児科病棟です。小児癌の一種、網膜芽腫に侵された中学生の入院患者牧村瑞人は院内でモノが無くなるのはアノ子が盗んでいるのではないか、との疑惑ももたれる問題児ながら、スグにでも眼球摘出の必要が迫る境遇であった。ところが、瑞人の父親は息子の手術に同意せず来院すらしない。困り果てた担当看護婦浜田小夜は瑞人を連れてその父親を訪ねることとなり、事件へと巻き込まれていく・・・。そこに、謎の歌手水落冴子とそのマネージャー城崎がかかわり物語は進んでいくのでした。

題名にいう「ナイチンゲール」とは看護婦のそれではなく、サヨナキドリというスズメ科の鳥の名前のことです。美しい鳴声で「歌姫」によく喩えられるそうです。この物語では謎の歌手水落冴子だけでなく、看護婦浜田小夜も大変な歌唱力の持ち主なのです。なにしろ冒頭に登場する病院での忘年会では優勝してしまうぐらいですよ。

チーム・バチスタの栄光」より落ちるとは言っても、ころんでも未だ「ひかり」です。第3弾の「ジェネラル・ルージュの凱旋」に期待しよう。