- 作者: 松本尚久
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 単行本
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安西水丸さんの絵も面白く平野甲賀さんの装丁も素敵な本・・・こういう本を見つけるとうれしくなります。またそれが落語関連の本となると、買ってしまうんですなあ。
ただ、これは不思議な本でした。
全12章からなっていて、夫々に「今」の噺家を扱っているんですがね。第1章はありがちといえば語弊がありますが、最近の落語本では第1等に扱われる立川談志師匠なんですが、その次が「笑点」と「ラーメン」で有名な木久扇師(先代木久蔵)、次が小満ん師、上方の八方師といかにもユニークなんです。
こんな順番に、というかこんなチョイスで噺家を語る本は見たことがありません。
通常、落語通といわれる方の本に木久扇師は登場しませんよ。
それが、木久扇のある意味淡々と語る「地語り」の昭和ネタを落語のひとつのあるべき姿として評価しているのです。
同じように、月亭八方師にも一貫したしゃべりのトーンというところで注目し、大阪の「文の里」の一門会まで足を運ぶのです。たいしたもんだ・・・。
上方では他に笑福亭松之助師(明石家さんまさんの師匠)を取り上げていますが、ある意味では八方師とはまた違ったトーンの一貫性のある噺家ではありますね。
他に柳家小満ん・三遊亭歌之介・桂小金治・古今亭寿輔・三遊亭金馬・桂文字助の各師を描いています。
小金治師の、実は映画俳優・TVタレントと活躍する間に噺家を休業していたからこそ、今の師の舞台は濃厚に昔の、文楽・志ん生そして三木助の時代を残していると語るあたりには頷かされ、一度聴いたことはあるものの、また小金治師を聴きたいとの欲望をおこさせます。
最後に特別篇として川柳川柳師と、今は亡き桂吉朝師を描いていますが、なんといっても、吉朝師の最後の高座となった「弱法師」にふれたラストの2、3行からは目が離せませんでした。
従来の落語論とは一線を画す本といえます。これまた落語ファンには必読の書ですな。