クリント・イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」


午後、歯医者に行って虫歯治療をしてきました。「少し沁みますよ」とやさしい言葉とはウラハラにウィ〜ンと機械はうなりをあげて、私の歯を削りだしました。ウワア痛いし、沁みるっと思わず体に力が入ります。「力を抜いてくださーい」と軽く指摘され、治療は続くのでした。ウィーンウィーンガリガリ・・・
しかし、いつかは必ず治療が終わる、この先生は治療してくれているのだと思えばこそ、この痛みに耐えることが出来るのだと思いました。私はとてもスパイにはなれないな、拷問ではスグに口を割ってしまうな、思ったものです。
その後、私は本日初日のクリント・イーストウッド監督作品「硫黄島からの手紙」を観に行きました。
やはり、本日封切りということもあって入場はチケット記載番号順となりました。ただ、超満員という訳でもあく、私が座った前方は結構空いていましたよ。
さて、「硫黄島からの手紙」・・・結果から言って、これは傑作でした。久しぶりに見終わった後にもう一度観たいと思わせる作品です。観る前は「武士の一分」や「犬神家」やら「プラダを着た悪魔」やら「長い散歩」「それでもボクはやっていない」なんかも観たいなぁなんて思っていたんですが、そういった思いはけし飛んでしまいました。
人間としてここまで極限状況を味合わねばならないのか・・・思わず絶句してしまうような極限状況を擬似体験しました。大宮の若いパン屋に感情移入しつつ、彼の恐怖を共に味わいました。ついさっき、歯の治療に小さな恐怖を味わったばかりだからなお更に恐怖を感じたのかもしれません。パン屋西郷を演じた二宮和也が素晴らしい!! 
彼はアカデミー賞でも助演男優賞等を獲れるのではないでしょうか。むしろ主演だとさえと思うのですがね。


家に帰り、テレビをつけると・・・電柱から降りられないネコや崖の中腹で途方にくれる犬がニュースになっているとは、なんと平和なことだろうと思うものの、片や、ワーキングプア等、現代日本が直面している諸問題も看過出来ない状況であることもこれまた揺ぎ無い現実として提示されており、今の社会がいかに脆い基盤のうえで均等を保っているのかと気づかされました。
戦後60年を過ぎて、臭いものにはフタ式のモラトリアム状態で放置しつづけてきた事共が、私達に不意の一撃をくらわすようなことにならなければいいがと不安な吐息を吐いて床につくこととなりました。
それ程に、この映画の一撃は大きかったのです。

翌日も録画してあったNHKスペシャルの「硫黄島」等を観て過ごしました。