斎藤寅次郎監督「お父さんはお人好し」


日本映画専門チャンネル斎藤寅次郎監督作品「お父さんはお人好し」を観ました。昭和30(1955)年の作品で、NHKラジオドラマの映画化作品です。主演はラジオで人気を博したコンビ、花菱アチャコ浪花千栄子!!!
13人の子沢山の果物屋を舞台に騒動が騒動を呼ぶというハチャメチャ喜劇です。
娘役のデビュー仕立ての初々しい中村玉緒や隣人の先代林家染丸、医者役の益田喜頓に怪しき遠戚のオッサン堺駿二堺正章の父)等の登場人物達も懐かしく、見ていて楽しいのですが圧巻は冒頭の大阪の町の俯瞰シーンです!!

川本三郎さんが古い日本映画に出てくる東京のシーンを懐かしみつつ語るエッセイが大好きですが、この映画はその大阪版を書こうと思えば最高の作品のひとつではないでしょうか。

画面はタイトルバックで中央に大阪駅をとらえます。当然ビルなど上にない平べったい駅・・・そこからカメラはゆっくりとパンしていき、阪急百貨店から阪神百貨店を映していきます。ついで、中ノ島。ここでもカメラはゆっくりとパンし、遠くに懐かしい大阪市役所の鐘楼を見せてくれ、四ツ橋筋が向こうの方まできれいに見えています。(手前に幸福相互銀行の建物が見えますが、地図で確認すると、今でも同じ場所に幸福ビルというのがありますね。)
タイトルはそこで終わり、ついで映画の舞台である天下茶屋方面から大阪を遠望するシーンにつながりますが、ここも木造家屋ギッシリ!! 遠くに大阪城が見えています。
これらの風景が1955年、戦後10年の風景とは・・・驚きを隠せません。一部に空き地も見えるもののギッシリと木造の家でうまっていて、見た目には大空襲をうけた町とは思えないのです。


いやあ、ホント一見の価値あり!!ですよ。