フォン・イェン監督作品「長江にいきる 秉愛の物語」


昨夜、永福町のドトールで少し読書をしてから渋谷に出ました。
ユーロスペースで先週に続いてドキュメンタリー映画を観るために・・・

今日の映画は中国映画「長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語」です。


働き者の秉愛(ビンアイ)は病弱の夫とふたりの子供をかかえながら一生懸命に働らき続け、小さな幸せをつかんでいました。しかし、政府から出された三峡ダム建設による移住命令のために今の土地から離れなくてはならなくなったのです。
政府役人との激しい応酬、長江のほとりで語る思い・・・
彼女の強さに打たれると共に、今までみたどんなドキュメンタリー作品よりも家族の中に入り込んだ画面に釘付けになりました。そして、時に驚くばかりに映画的なシーンの数々!! アンドレイ・タルコフスキーを思い出させるシーンまであるとは・・・
映像ばかりではありません。彼女が語りだす体験談に我々は圧倒されてしまいます。
それは彼女自身の物語でありながら見事に現代中国史の一断面となっています。中には文化大革命に及ぶ話もありました。しかしなんといっても一人っ子政策のために何度となく自分自身で中絶をした話は、延々と見つめ続けるキャメラの前で、時に身振りを加えつつ、静かに語る彼女の姿とあいまって、我々観客を打ちのめされずにはおかないのです。
なんと豊饒なフィルムでありましょうか!!
見直す度に新しい発見をさせずにはおかない映画ではないでしょうか。
この監督は日本でドキュメンタリーの作り方を学び、この映画にも録音で日本人が参加しているということもうれしい話ではあります。
それにしても、
オレはなんとスゴい映画を観てしまったのか・・・

私は軽く興奮した頭を冷やしながら、寒い夜道を井の頭線渋谷駅へと急いだのでした。





■公式HP 
http://www.bingai.net/