ナ・ホンジン監督作品「チェイサー」

この映画を観に六本木に出掛けたのだが、出掛けただけの価値がありました。
スゴい映画やねえ・・・ただ、もう一回観たいかと訊かれれば、「勘弁して欲しい」と言ってしまう、それだけしんどくもインパクトのある映画なのでした。
なにしろ、この作品は韓国で実際に発生し、日本でも話題になった連続殺人事件が素材となっています。2003年9月から2004年7月までの10カ月に21人を殺害したユ・ヨンチョル・・・高給取りの大学教授夫妻を殺害してその家に居つき、次々に人を殺してはソウル市内の山に埋めていく、やがては風俗嬢をターゲットとし、テレクラ嬢やマッサージ嬢を殺しまくり埋めまくった恐るべき殺人鬼!!

さて、映画は・・・
デリヘルを経営する元刑事ジュンホ。多額の手付金を渡してある女達が次々に失踪する。最初は手付金の持ち逃げだと思い捜査し出したジュンホだったが、失踪するデリヘル嬢が同じ携帯電話の客の処へ行ってから帰って来ないことに気付く。
また、その携帯からかかってきた。ジュンホは体調が悪いといって休んでいたミジンを無理矢理に呼び出してその男の元に派遣し、場所がわかったら電話しろと指示するが彼女からの連絡はなかった・・・
犯人が彼女達を売り飛ばしたんだと確信したジュンホは、以前に失踪したデリヘル嬢の車が放置されていたマポ区マンウォン町でミジンの車を発見し犯人を探し出すのだった。
ミジンの行方を知る手掛かりにと、ミジンのDNA採取に自宅を訪ねたジュンホはそこで母の帰りをひとり待つ娘と出会い、その子を連れての捜査をすることになるあたりはヴェンダース監督の「都会のアリス」や「パリ・テキサス」を想起させます。
長編第1作というナ・ホンジン監督。いやたいしたモノです。手持ちカメラのブレる映像が細かくカット割りされていて、屋外の追跡シーンでも俯瞰ではなくローアングルを狙う等凝っている。グングン引っ張るストーリー展開もさずがハリウッドでディカプリオ主演でのリメイクが決定しただけあります。その脚本もナ・ホンジンの作というから恐れ入りますなあ。
救いのない展開ではありますが、脚本がドライなんですよね。殺人鬼の幼い頃とか、そこに至った背景などはほとんど触れずに事件の進行のみを見せ続けていく潔さ!! これはなかなか出来ないことだと思います。(邦画でいえば今村昌平の「復讐するは我にあり」が殺人鬼を描いていて似ていますが、やはりこの「チェイサー」よりは随分ウェットですよねえ・・・)
最後になりましたがジュンホ役の俳優キム・ユンソクと殺人鬼役のハ・ジョンウも素晴らしかったです!!





追記:それにしてもソウル市警なのかな? この映画では警察が随分道化師として描かれていますが・・・犯人や拘束したジュンホを何度となく取り逃がしていますが、実際にはどうなんでしょうか?(あと、ソウル市長も・・・?でした。 笑)