川口浩史監督「トロッコ」


銀座シネスイッチへ本日公開初日の「トロッコ」を観に行ってきました。

監督第1作をオール海外ロケで、それも向こうのスタッフで撮影するという意気や良し!!
もっとも、監督は芥川の「トロッコ」を映画化したくて、日本にトロッコがないので助監督時代に耳にした
台湾に行ってみたら話が膨らんでいったらしいのですが・・・


台湾人の夫が亡くなり、妻が息子を連れて夫の実家を訪ねる・・・というお話。夫の父母や兄弟達、それに村人達との交流が、台北南部の花蓮の山あいの村を背景に描かれている。

台湾の緑多い風景がいいうえに、向うの役者さん達の自然な感じがまたいいんです。
日本人はといえば、親子3人のみ。
主演の夕美子役の尾野真千子がいい!!
NHK「外事警察」やNHK「赤い魚」の彼女に驚いていた私は更にこの演技で驚かされました。
演技というより自然な、「色のなさ」とでもいうべき存在感かな。
この映画ではよく走ってましたね。その走る姿もよかった。画面の奥、森の方へ子供を探して走り去る姿が心に残りました。
子供達も自然な感じで村に馴染んでいくのがいいですね。最初は反発もありDSを手放さず、家の中では靴下を脱がず…と頑なだったのが散髪されて昭和40年代風の髪型になったら「トロッコ」の世界に溶け込んでいきました。
キョトンとした弟と小津映画にでてくるようなやぶにらみ気味の兄貴。
お母さんに怒られてばかりの兄貴の心が解き放たれるとき、そこに感動が生まれるのでした。
そして日本占領時代を引きずる祖父。だからこそ日本語を話せ孫達とコミュニケーション出来るのですが、日本の為に兵役につきながら報われない思いも持っているのでした。
それらを全て亜熱帯の台湾の風土が包み込んでいます。
音楽も心に残ります。「島の鵜の鳥や日暮れに帰る♪」に似た旋律のリフレインが心地好い。

自分自身の好みから言えば、ややカメラが動きすぎだと感じましたが、まだ監督第1作です。
これからも注目していきたい監督ですね。次回作はなんと全編韓国ロケ韓国人主演だそうです。
川口監督に要注目!!