新宿末廣亭 8月18日

南なん 狸札 途中から
ボンボンブラザース 曲芸
遊馬 酢豆腐


夜の部
ふくびき やかん
昇市 看板の一
真理 漫談
昇吉 七段目
文月 ざるや
チャーリーカンパニー コント
べ瓶 明石飛脚
柳太郎 たかしの葬式
北見伸 奇術
桃太郎 裕次郎物語ルイジアナママ
中入り
太福 地べたの二人 湯船の二人
ぴろき ウクレレ漫談
柳好 悋気の独楽
鏡味正二郎 太神楽
昇太 花筏


出来れば昼の部の膝替わりボンボンブラザーズは見たかったが、全生庵で幽霊画なぞ見て風流に構えていたので、こりゃだめだろうと入ってみたら、その手前の南なんの時で余裕のセーフだった。
末廣亭は2階席も開いている満員の盛況、桟敷席などほんの少ししか空いていないところ、一番前の上手側に並べたパイプ椅子という食いつきの席に座らせてもらう。

この南なんという芸人も不思議系で寄席で見たら得した気分になる。ついでボンボンブラザーズ、こんな目の前で見られて私は幸せもんです、と思うのだから私の幸せなんて安いものだ。しかしその価値がある芸ですよ、ホント。鼻先に長細く折った紙を立ててバランスをとる様は何度見てもおかしい。今日はそのまま客席に降りてきたから驚いた。随分段差あるからね。しかもそのまままた上がっていくんだよ。是非、ボンボンブラザーズを見に芸協の芝居に行ってください。
昼の部トリは遊馬で「酢豆腐」。上方より逆輸入の「ちりとてちん」と違い、本当に江戸の香が豆腐の臭いと共にする噺だ。それを顔の筋肉も駆使して演じ切る。遊馬はまだ数える程しか聴いたことがないが、もっと聴き込んでみたい噺家の1人。


昼席が終わりなんとか2列目に座ることが出来た。前座に続き、昇太の弟子2名が真理さんを挟んで続く。「看板の一」をやったので、昇太がそれじゃなくなって一安心。浅草正月二之席でその噺は聴いているので心配していたんだ。昇市グッジョブ!! ついで非常に渋い、渋過ぎる文月、調べたら先代文治一門で驚いたことに未だ40代、見えない・・・。そして掛けたネタが「ざるや」・・・ネタまで渋いじゃないか。どうした事だと心配しつつも文月がはけて出てきたのがチャーリーカンパニーで、コント。正統派コントというべきか、古典的な展開が続き少し驚かされたがこれも寄席である。さてお次はと見ていれば、膝隠しと見台が出されて上方落語だ。前座が小拍子を置かずに下がろうとして袖の前座仲間から「小拍子、小拍子〜」と声が飛ぶ。上方枠が設けられたりしているので芸協の前座は大変だ。上方枠、今日はべ瓶で「明石飛脚」。これは以前にも彼で聴いたことがあるなあ。何度もサゲと錯覚させて拍手をもらい、「(終わりと)違う、違いますよ」と続けていく。これも彼のニンに合うた賑やかな噺だ。ハメモノの韋駄天もよく合っていた。


見台が仕舞われて、出てきた柳太郎が自作の葬式ネタでご機嫌を伺う。まあ、芸協風味と言っておこうか。北見伸のマジックはいつ見てもお見事で最後のご家庭でどうぞとトックリネタのトリック紹介も楽しい。そして重鎮桃太郎だ。最近はこの噺ばかりと聞く「裕次郎物語からのルイジアナママ」これは芸協のガーコンだな。ルイジアナママを桃太郎が歌い出すと楽屋から噺家たちがある者は私服で飛び出して来てモンキーダンスを踊る、というか踊らされる。
昇太もこの為に早く来てくれって言われて大変なんですから〜とあとでぼやいていた。昔昔亭桃太郎は柳昇門下の先輩で逆らえないよね。そんな桃太郎ももう73歳だ。
と、みんなが疲れ果てたところで中入り。


中入り後のくいつきはなんと!浪曲玉川太福だ。ここは小痴楽・宮治との3人の交代枠で今日は小痴楽だとばっかり思っていた。3人共好きなのだが、一度寄席で太福を聴きたいと思っていたので大喜びして「待ってました!」なんて掛け声をかけた。太福の「地べたの二人」受けたな〜。大ウケ。我がことのように嬉しい。確かに面白いからね。もう席を確保した感じで安心しました。大急ぎでテーブル掛けを片付けて出てきたのがウクレレ漫談のピロキ。彼も久しぶりだなあ〜。やや小声の様に感じたけれど面白いのは変わらない。見事に色が変わりますね。ついで柳好は「悋気の独楽」、この間カメリアホールでさん光のを聴いたばかりだけれど、味の出てきた柳好が喋れば何でもいいやと思えてしまう。また経堂で一緒に酔っ払いたいもんだ。でピンでの太神楽鏡味正二郎、横のおかあさんの旦那が最前列で頭光らせながらよく驚きよく手を叩いていました。こういう客が寄席には必要なんです。桃太郎の歌にも一曲終わる度に「うお〜」なんて感嘆の声をあげてたよ。また寄席に来てね。という訳で、いよいよ今年2回目の春風亭昇太降臨である。


楽しいマクラの時間が過ぎ、提灯屋に親方登場でホー花筏か。昇太の噺は元あるネタにクスグリをどんどん追加したというより、一旦プラモデルのように分解して改造部品を入れて組み立てなおした感じ?いわゆる再構築だな。それであんな提灯屋が出来上がったんだね。朝起きたら口のまわりが鱗だらけとは恐れ入谷の鬼子母神だよ。花筏であんなに笑ったことはないなあ〜。またも参りましたと頭をさげて寄席を出たら深夜寄席の長い行列が待っていた。
入り前に伊勢丹で神田志の多寿司を買って、中で食べたんだけど同行のさるえ堂とこのまま帰りがたくなって鳥良に上り込んで寄席噺に興じる夜となったのでした。
(敬称略)