西田智著「ニホンオオカミは生きている」

ニホンオオカミは生きている

ニホンオオカミは生きている


新潟へ向かう途中で読了したこの本は私にとってまさにストライク!!とでもいうべき内容の本であった。そして、著書の西田先生(元高校の校長先生)には頭がさがります。

2000年11月20日の読売新聞は一面でこの本の表紙の写真を掲載し、「ニホンオオカミか 九州の山中で撮影」と報道しました。朝日・毎日も続いて報道し、一時話題になったので覚えておられる方もおられるかもしれません。
ニホンオオカミは1905年に奈良県吉野村の鷲家口で捕まった1匹を最後に絶滅したとされています。しかし、その後も目撃情報はあとをたたないのです。そもそも、ニホンオオカミは何物かということが学術的にも決定していないあやふやなところもあり、それらの情報を元に判断出来る人も皆無に近いのですよ。残っている標本はオランダのライデン博物館と大英博物館、それにニホンでは国立科学博物館和歌山大学東京大学にしか残っておらず、それらもそれぞれ特徴があり(剥製の仕方を間違えたものもあり)なかなか頼りになりません。
ただ、遺跡からはニホンオオカミの頭蓋骨は結構出土しており、また民間信仰として旧家や社寺に残っていることから、ニホンオオカミの可能性がある「犬類」を捕まえて、その頭蓋骨を比較すれば学者の方も鑑定することが出来るという訳です。
射殺する、もしくは生け捕りにして頭蓋骨を見ない限りは、「なんでも鑑定団」で掛け軸を眺めながら、「この落款は見たことがないのでニセモノです」と断定されるように、「この写真だけでは判断出来ません。おそらく違うのではないでしょうか」と言われるしかないのです。
西田先生はもともと野鳥(ナベヅル等)の野外観察を続けてこられた方で、その一方で九州では絶滅したと言われているツキノワグマの調査に参加されたり、若き頃、耳にされた山犬の遠吠からニホンオオカミもしくは新種の犬類の生存を調査されていたのでした。教員生活の間に、また退職後にも主に祖母山系を踏査されてきました。
そんな中、2000年7月8日、ついにこのオオカミは先生の前に姿を現したのでした。
本著では哺乳類分類学の大家今泉博士が「ニホンオオカミに間違いない」と断定されているのですが、高齢の博士の鑑定を疑問視する学者も多いようです。
この春、山梨県立博物館での山根一真氏の講演会でも、山根さんはこのオオカミ及び今泉博士の鑑定に対して否定的に述べられていました。
シェパードとかオオカミの血を入れた狼犬とか、日本犬の一種「四国犬」に違いないという意見も多いようです。
この本でありがたいことは資料として8ページものカラー写真があり、冒頭の表紙になっている写真以外にも同じオオカミの写真を計10枚も目にすることが出来たことです。





これはオオカミに間違いありません。(左下は四国犬、あとの3枚がこのオオカミです。)
犬を飼育している同僚の犬木さんも小山の帰りにこの写真を見て即座に「こりゃ、オオカミだな」といいました。また、この著書の中にでてくる狼犬といってシェパードやハスキー犬と大陸オオカミなどを掛け合わせたものを多く飼育している人も、この写真を見て「これは狼犬とすれば90%以上の狼犬(犬と狼を掛け合わせて50%さらに2世代以上掛け合わせた狼犬)だが、大きさが小さ過ぎるから、やはりニホンオオカミなのかな?」と言われています。

みなさん、書店で是非この本を手にとってカラー写真だけでも目にしてください。もし、興味をもたれて購入、読了されれば新しい世界が見えてくることでしょう。