西村雄一郎著「黒澤明封印された十年」


黒澤明 封印された十年

黒澤明 封印された十年

あずさ車中で読了しました。西村さんのクロサワものは他にも色々と読んでいますが、これは黒澤明が苦悩する1966年から1975年までの10年間を自分の青春と重ねて描いた一種の青春グラフティですね。
もう何度となく読んでいる逸話が名人芸の域に達していますなあ・・・。
西村さんが早稲田の大学生でクロサワ映画を研究していた時に新宿の名画座でクロサワ映画「七人の侍」「隠し砦の三悪人」の2本立てをやってて、観に行ったら偶然にも隣の席に黒澤明本人が座っていて驚愕!! 劇場を出た処で声を掛けて一緒にビアホールへ行くって話しね。その後の西村さんの興奮状態も面白く、やはりこのシーンが一番秀逸でした。
興奮して友人のアパートに行き、「今、オレは誰に会ったと思う?!」と問えば、「黒澤明だろ」と平然と言われたそうです。友人は後に「西村があれだけ興奮する相手は黒澤明しか考えられなかった」と語ったそうですよ。



1966 映画館総数4,296館 入場者数 34,581万人 「暴走機関車」頓挫
1967 映画館総数4,119館 入場者数 33,506万人 「トラ・トラ・トラ!
1968                                  「トラ・トラ・トラ!」解任 任侠映画ブーム・ATG
1969 映画館総数3,602館 入場者数 28,398万人 四騎の会「どら平太」頓挫  2001年宇宙の旅 
1970 映画館総数3,246館 入場者数 25,480万人 「どですかでん」      70年安保
1971                                  黒澤自殺未遂        大映倒産
1972 映画館総数2,673館 入場者数 18,739万人               浅間山荘事件 
1973 映画館総数     館 入場者数 18,532万人 「デルス・ウザーラ」始動
1974 映画館総数2,468館 入場者数 18,570万人 シベリア撮影
1975 映画館総数2,443館 入場者数 17,402万人 「デルス・ウザーラ」公開 

(数字のない部分は記載のなかったものです。)

  

1975年頃には映画館総数、入場者数共に下げ止まった感がありますが、共にわずか10年で半減に近い減少とは驚かされます。黒澤明の自殺未遂もテレビ時代の到来に対する葛藤であったようです。
この本の中では、先ほど急逝された熊井啓監督が何度となく登場されますが、松本出身の同監督は次回作として安曇野出身の飯沼飛行士の映画を企画されていたそうです。
一度、熊井監督作品を見直してみたいと思っております。