くまざわあかね著「落語的生活ことはじめ 大阪下町・昭和10年体験記」

また一冊読了しました。古書店で買い求めたもので、これも読みやすくスラスラと読めましたな。

落語的生活ことはじめ―大阪下町・昭和十年体験記

落語的生活ことはじめ―大阪下町・昭和十年体験記

「落語的生活ことはじめ」とありますが、主題は副題でもある昭和10年体験です。
大阪の中でも戦災をまぬがれて木造の長屋等、昔の街並が残る空掘(からぼり)の一角で1カ月だけ、昭和10年の暮らしを体験するというものです。

和服で暮らし、電球は40ワット。テレビなし。冷蔵庫なし。洗濯機なし。電話なし。
ラジオはNHKのみ、朝6時から夜10時まで・・・
買い物もコンビニ禁止。近所の商店街のみ。
料理はマッチでつけるガスコンロと燗適(カンテキ 一般的には七輪)暖房は火鉢。
お風呂は当然銭湯・・・。

今のマンション生活にはない、大家さんやご近所との密接な人間関係や、スーパーではない、買い物をする度の店主との雑談を楽しみ、てんやわんやはあるものの、あかねさんはこの生活をエンジョイされておりました。
着物姿で歩いていて高校生の一群から「バカボン?」と言われたといいますから、着物姿も板についていなかったのでしょうかね。(笑)



著者くまざわあかねさんは1971大阪生まれの日本では数少ない専業の落語作家さんです。関学卒業後、落語作家の小佐田定雄氏に弟子入りし、新作落語をつくり続けています。
彼女は落語をつくっていく為にも、一度昔の生活を体験しようとはじめたのです。大阪の新聞社の取材や落語家等の訪問ひっきりなしでにぎやかな1カ月だったようですよ。
毎日・産経と色々な新聞記事になったようで、なかでも産経新聞は夕刊1面に「落語の人情世界 昭和年代って?」と掲載されていたとか!!

この昭和10年生活は平成14年の4月から5月にかけて行われています。今から6年前ですよね。でもその当時は米朝師匠は現役バリバリ、今は亡き文枝師匠もお元気だったんですなあ・・・
テレビはまだニュースステーションの時代だし・・・月日の流れは早いものだと痛感させられます。
それと、巻末の昭和10年の記録を見て驚いたのは、平均寿命です。
男性44.8歳、女性46.5歳!!
男性は日中戦争中ですから寿命が短いこともよくわかるのですが、女性までこんなに短いとは!!
ちなみに当時の日本の人口は97,694,628人でした。