昨日紹介しました、くまざわあかね著「落語的生活ことはじめ 大阪下町・昭和十年体験記」の舞台である空掘・・・


もうふた昔以上前の話ですが、「ちりとてちん」の舞台に近い天満天神裏手の会計事務所に勤めていた頃、確定申告の束を持って、年に一度は地下鉄谷町線谷町六丁目駅から空掘商店街を抜け、古い長屋がたくさん残る空掘の町を通り、七丁目の南税務署まで歩いていたものです。
こんな町に住みたいなあ・・・と空想しながらね。

そこで、今日は東京の下町(厳密に言うと東京の下町とは日本橋界隈らしいのですが・・・ともかく下町風の町)を求めて葛飾区の四つ木から立石を散策してきました。

東京の下町、というか古い家屋や情緒が残っているところといえば、いわゆる「谷根千(やねせん)」、谷中・根津・千駄木や本郷あたりでしょうが、そのあたりは以前の東京暮らしの際に何度か訪れていますので、(そちらへの再訪もしたいけど)今回は少し趣向を変えてみました。
種明かしをすれば、3月17日に紹介した川本三郎さんの「東京暮らし」の一編「「画家と下町スケッチ」に次のような一節がありました。

京成関屋駅京成電車に乗り、青砥駅で降り、次の立石駅まで歩く。柳原も立石も戦災をまぬがれたので、昭和はじめの木造住宅や商店が残っている。東京では珍しい「昭和の町」の面影がある。』

よし、京成立石駅周辺を散策しよう!!と、最近愛用の「東京23区でっか字マップ」(昭文社刊)で下調べ・・・川本三郎さんと少し違えて、青砥からではなく手前の荒川岸の四ツ木駅から立石駅を目指すこととしました。
さあ、出発です。
家の近くの花々の綺麗なこと♪ 

まるで乱舞って感じですなあ。


今回は品川駅で京急に乗り換え東へ・・・
荒川(放水路)を越えたところにある京成四ツ木駅で下車しました。
まずは駅から北に出て、荒川を眺められるところはないかと捜しましたが・・・断念!!
駅から南東方向に進み東へと弧を描きながら隣駅の立石を目指しました。

まずは駅北のY字路と灸院

この四ツ木のお灸というのはその道(どの道かわかりませんが・・・まあ、その道)の方々には有名なんでしょうかね。
大阪ではヤイトといいます。昔は子供が悪さすると、「ヤイトすえるよ!!」と言われたものです。
私もいちびった祖父母にいちびってヤイトしてもらって、ひたすら熱かった記憶がありますなあ・・・


このあたりもドンドン新築の建売が増殖しており、古い家屋は途切れ途切れに僅かばかりに残っているだけでした。それ等はほとんどトタンに覆われており、その多様な色彩が心を慰めてくれるのでした。

こんな看板がありました。

太い眉毛にドングリ眼・・・警視庁の隈取をした歌舞伎町の眼が見ているゾ!!という看板は家の近くにもたくさんありますが、これはいかにも葛飾、下町の看板という感じがしますなあ・・・








まあ、色とりどりのトタンに花も咲いて・・・でも凄まじく、錆びてしまったアパートもあって、味が出すぎてる感じですな。
どっこい、そこにも洗濯物が翻り・・・いやあ、現役です!!

でも、スゴいなあ・・・となかば感激しつつ次の角を曲がると、こんな風景があらわれてガッカリする訳ですな。

この風景に味が生まれるのは・・・相当むずかしいね。まあ30年以上はかかるでしょうか。



家々の花も美しく、緑の少ない町にトタンと並んで彩りを加えていますな。
平和橋通りを渡ったところに「渋江公園」という大きな公園がありました。

まさに春の公園ですなあ・・・♪



路地を抜けますと、大きな工場跡地のようなところに出てきました。工場を壊したものの、鉄骨組だけは残してあるのか・・・自動車もたくさん駐車してあるし、そこを駐車場にしているのかな?と思っていると・・・
ウイ〜ン
突然、大きな機会音がしました。見上げると、鉄骨の屋根近くのクレーンがゆっくり動いているんでビックリしました。

実はここは平和島自動車学校の一部でクレーン学校だったのです。成る程、成る程。

立石駅に向かう前に中川を見てみようと東へ・・・
なにもかもに無効を宣言するように、ただなにもなく鈍い川面がベタ一面に広がっておりました。


空が広いのが気持いいですよね。
少し上流にあった本奥戸橋を渡ってみました。

ただ、渡ったところで何がある訳でもなく・・・すぐに戻ってきましたが、橋詰にお地蔵さんと馬頭観音が祀られていました。貞享(じょうきょう)年間(江戸初期)からあるということですから結構古い地蔵ですね。



立石駅近くにも少しですが古いお店も残っていました。右下のガラス戸はお米屋さんです。右端の黄色いものはプラッシーの冷蔵庫でした♪


これは会社名が面白かったものです。

「株式会社いのうえやす」

いいじゃないですか!! 歌舞伎の「「与話情浮名横櫛」(切られ与三郎)に出てくる「蝙蝠安(こうもりやす)」みたいだけど・・・面白い。
総合玩具企画製造卸の会社のようでしたが、調べてみるとカラフルなHPがありましたよ♪

http://www.inoueyasu.com/


京成立石駅の近くに大きな黒門がありました。
ヤクザさんのお宅か!! と思えば・・・大きく「影武者」と書かれてありました。

門番として鮭を加えた木彫りのクマがおりましたが、どうも古道具屋のようですね。それにしても大層な構えですなあ・・・




■散歩は四ツ木駅から南東方面に進んで一旦中川を渡ってから立石駅まで歩きました。



川本三郎さん「東京暮らし」についてのブログ
http://d.hatena.ne.jp/sampodow/20080317