安藤忠雄建築展

乃木坂へ行ったのはギャラリー・面で開催されていた「安藤忠雄建築展 『挑戦―原点から―』 」を見るためでした。
なにしろ、あの安藤忠雄の原点・出発点ともいえる「住吉の長屋」の1/1スケールモデルが作られているというのですから行かない訳にはいきません。



安藤忠雄をはじめて知ったのは80年代、大阪読売テレビで放送されていた桂文珍由紀さおり司会の番組「おもしろサンデー」でだったと思います。そこで、この「住吉の長屋」の映像紹介があり、その独創性に驚かされました。

長屋ながら中庭があり、それによって完全に分割された入口部分と奥側のスペース(ここにトイレ等あり)に行くには中庭という外部を通らねばならない構造、また2階へ行くにも中庭の階段を使用しなければならないのです。2階は渡り廊下で結ばれていて、1階で入口から奥に移動するにはその渡り廊下が屋根がわりになりますが、2階で隣の部屋へ移動するには雨ならば傘をささねばならないのです。1Fから2Fへの移動も傘や冬なら防寒が必要という、簡単に言えば不便、しかしながら面白い生活をせざるをえない空間、自然を感じる、季節を感じるには広い空間は必要ないのだという建築家の思想が具現化したこの建築物は80年代以降多くの建築に興味のある人々を虜にしつつも、単なる提案・実験作ではなく、30年にわたってそこで生活し続けているオーナー家族がいるという家屋なのです。

写真は2階の入口側から渡り廊下・奥側居室を眺めたものです。狭さもわかっていただけるのではないでしょうか? なにしろ昔からある三軒長屋の真ん中を壊して作られた家ですからね。
1/1スケールモデルは合板を多く使って再現されていましたが、大満足でした。

他にも詳細な光の教会のモデル(打ちっぱなしコンクリートの十字の隙間から光が入ってくる教会)や東急東横線渋谷駅、東大福武ホールのモデルがあり非常に内容の濃いものでした。
現在、海外で勧められている多くのプロジェクトも紹介されており、バーレーン遺跡博物館・アブダビ海洋博物館やメキシコ・モンテレイ大学RGSセンター等も興味深いものでした。しかし、この世界不況の中で頓挫してしまうものも発生すると思われ、そこが気がかりですね。
(個人的にはパリ・スガン島のビノー美術館の計画中止が残念でなりません。)