川本三郎著「東京暮らし」

なかなか味のある本を読了しました。味は味でも鯵のナメロウ系ですかね? 川本三郎さんの「東京暮らし」です。
川本さんは映画評論家・文芸評論家でして、私の好みにドンピシャな方で、今までも何冊か読ませていただいております。
特に「東京散策もの」や「古い日本映画のロケ現場訪問もの」が好きなのですが、今回は前者の「東京散策もの」プラス郊外バージョンというところでしょうか・・・



東京暮らし

東京暮らし


川本さんの「東京散策もの」は荷風の歩いた地をめぐるものが多いのですが、この本でも荷風が晩年に暮らした市川市を訪ねておられます。荷風は昭和21年に市川市へやってきて、同市内で3回転居し、昭和34年4月30日に亡くなっています。市川市八幡の終の棲家が残っており今も養子の方が住まわれて、「断腸亭日乗」を大切に保管されているそうですが、この本ではもう一軒現存している、旧家を訪問した際のことが語られています。

東京近郊の映画のロケ地や海を見に行って駅前の大衆食堂でビールをかたむける至福の時を語っておられます。
千葉の海を見にいっては「なめろう」をサカナ(関西風に言えばアテ)にしてビールをかたむけ、東京で外国映画の試写会に行き、帰りにブリヂストン美術館青木繁の「海の幸」を眺めてから、近くの居酒屋で「なめろう」をサカナにビールをかたむけ・・・といった感じですね。
中央線の高尾より先、甲府までにある20ほどの駅のひとつずつで下車して町歩きを楽しんでおられる姿には、さすが「町歩き」のプロだなあ・・・とうならされました。私も中央線の「上野原駅」に行って景色眺めながらビールをかたむけたいものです。
東京近郊といいながら、中には北海道や大阪の天神橋商店街、北京の胡同、釜山国際映画祭なんかにも足をのばされていますね。

そうそう、善福寺川公園等、杉並区がよく登場すると思っていたら、川本さんのお住まいは私の仕事場である浜田山駅近くだったのです。驚いたなあ・・・ますます親近感がわいてきました!!

この本は川本さんの小さな日帰りの旅と、自宅で飼われているネコたちのエッセイ集なのです。
是非、本屋さんで一度手にとってみてください。


P.S. 3月19日の通勤時に川本三郎さんを浜田駅構内でお見かけしました♪