由井英監督作品「オオカミの護符」


東中野のボレボレ東中野という小さな映画館に由井英監督作品「オオカミの護符」という映画を観に行ってきました。
映画はドキュメンタリーで、川崎市宮前区土橋に古くから住んでいるこの映画の製作者の家の土蔵の入口に毎年新しいオオカミの護符が貼られているという話から始まります。
この地区には東京都青梅市御岳神社を信仰する御岳講が江戸時代から続いており、御岳神社御師(おし)が新年にこの護符を手に各家庭を廻るのですね。
古くから農民達と強く結びついた御岳講や、青梅・多摩・秩父に点在するオオカミ信仰をこの映画は描いていきます。
驚いたのは毎年の作柄を占う太占(ふとまに)が未だに続けられていたということですね。歴史で古代の信仰として習った太占・・・これは中国の甲骨文字発生にもつながる古いもので、鹿の肩甲骨を焼いてそのヒビで25品種に及ぶ作物の出来不出来を占うんです。

この写真は階段のところに掲示してあったものですが、肩甲骨を紙に写し取り、円を25分割して、無作為に選んだ作物の名前を書いていきます。焼いてヒビの入った肩甲骨と照らし合わせて、ヒビが及んでいなければ10点、ヒビが円中央に近ければ低い点数となるのだそうです。
今でも農家のお年寄りはこの占いで作物の出来不出来を読み取ることが出来ます。(映画ではそのシーンがありました。)

害獣(イノシシ・鹿)を食べてくれるオオカミは山間部の焼畑農業ではまさに神の存在であり、それが今や都市となった川崎市にも息づいているという事実に、連綿として続く歴史の興味深さを感じずにはいられませんでした。


■参考 2007年3月11日の山梨県立博物館へ「オオカミがいた山  消えたニホンオオカミの謎に迫る」に行った際のブログです。

http://d.hatena.ne.jp/sampodow/20070311