このご時世に落語会 一之輔の「真一文字」

この週はコロナ騒動の中でも開催された落語会にふたつ行った。ひとつは国立演芸場で毎月恒例「真一文字の会」、これは一之輔の独演会。もうひとつはお江戸日本橋亭での「龍志・扇遊二人会」だ。前者は国立の施設で他の会は全て中止もしくは延期になっている中での、いろんな批判があろうがの強行突破!珍しく空席もあったが、それは買い求めたもののコロナが怖いかコロナにかかっちゃったかの方々だろう。いや待て、喘息持ちなどで遠慮した人もいるハズだ。現に一人知っている。

そんな中、前座がしゃべりだして幕は開いた。


貫いち 桃太郎

一之輔 粗忽の釘

一之輔 甲府

仲入り

一之輔 らくだ

 

桃太郎のあと一之輔登場、客席を眺め「来てくれてありがとう」と何度も言う。やはり相当追い詰められているんだなあ~と悲しくなる。その後、「でもね、エムズの加藤さんなんかひとりイープラスで大変なんですよ」と主催者の加藤さんの話を出すと、いいタイミングで加藤さんが袖から顔を出して高座に2人で並ぶこととなった。加藤さんは談志の真似をして座り、それがまた面白い。すると一之輔も談志を真似だしふたり談志の状態。加藤さんはキレキレでしたねー。「『どこの基準だ』って言うから『俺の基準だ!』と答えてやった。」とかね。加藤さんが去ってからもおさまらない一之輔は吉本のはなしだの色々話してくれて、ひと呼吸置いて「粗忽の釘」に入った。途端に客がクスリと笑ったので「なんで笑うの?」と「?」の状態で噺へと帰っていった。そりゃ「ほほう、ここから『粗忽の釘』かあ」というニヤリとした笑いだよね。この「粗忽の釘」は目いっぱいの爆発力があって素晴らしかったな。今まで数多く聴いた一之輔「粗忽の釘」の中ではピカ一だと思う。

続いて、おや珍しい「甲府ぃ」は手堅くまとめ、そこでまるで発電所のように蓄えたエネルギーを、最後の「らくだ」で転換し屑屋の怒りとして爆発させた。今のこの落語会が軒並み中止になる閉塞感の中に囚われている噺家一之輔自身がまるで屑屋そのものであるように。

さて、もうひとつの落語会の話はまた今度だね。疲れたよ。